Subject : ラマン分光法
カテゴリー : 産業・技術
ラマン分光法
-
試料にレーザー光を照射し、発生するラマン散乱光を測定することによって、物質の定性分析(または定量)を行う手法。カーボンの種類を同定したり、ガラスアンプル中の試料を測定したりできる。
気体、液体、溶液、固体、結晶、繊維、フィルム等、物質の状態に関係せずあるがままの状態でしかも、非破壊でスペクトルの測定が可能
ガラス越しの測定が可能
水溶液の測定が容易
透明な容器中の試料も、直接測定できる
ラマン分析法の利点には以下のようなものがある。
透明な物質で覆われている場合には、非破壊である程度内部まで分析できる。
レーザーを励起源にして顕微鏡と組み合わせて使うと、 微小領域(空間分解能 1μm)の分析ができる。
液体ならばキャピラリーで数μL、固体であれば数ng程度で測定可能
顕微鏡用スライドグラス上の試料を直接分析できる
空間分解能1μm
マッピング測定可能
共焦点光学系を生かした、埋没試料の測定が可能
ラマン分析法でわかること。
包有物のラマンシフトから、生成時の圧力がわかる(振動状態が 格子間隔の影響を受けるため)。
- ● ラマン散乱分光分析(RAMAN)
-
原子が結合することにより振動状態が生じます。分子や結晶には、それぞれ分子内振動や格子振動と呼ばれる物質固有の振動状態が存在します。これらの振動に関する情報は、赤外吸収スペクトルやラマン散乱スペクトルにより得られます。
永久双極子を持つ異核2原子分子の伸縮振動は双極子モーメントを変化させます。このような振動モードは赤外活性と呼ばれ、赤外吸収スペクトルに観察されます。
等核2原子分子の伸縮振動は分極率変化を誘起します。このような振動モードはラマン活性となりラマン散乱スペクトルに観測されます。このことから、両スペクトルは相補的に用いられます。
一般に、量子化された振動状態において、振動の励起エネルギーは赤外吸収に相当します。一方、励起光ν0に対して振動エネルギーに対応する波数(ν)の異なった光が散乱される現象がラマン散乱です。振動の基底状態から励起状態へのラマン散乱はStokes、励起状態から基底状態へのラマン散乱はAnti-Stokesと呼ばれます。
○長所
分子構造、結晶構造に関する情報が得られる
赤外吸収分光分析に比べ微小領域(>φ0.5μm)の測定が可能
非破壊分析
▼短所
絶対定量値を求めることが困難
深さ方向分解能が高くない(≧1μm)
励起光により蛍光が誘起され、ラマン散乱光の検出が困難な場合がある
・結晶性の評価
一般に、長距離秩序が保たれている結晶において格子振動(フォノン)が存在し、これらはラマン散乱や赤外吸収スペクトルに観測されます。結晶性が低下し、長距離秩序が乱れると、これらのフォノンバンドは著しく変化します。例えばアモルファスシリコンの温度による結晶化過程におけるラマンバンドの変化を示します。結晶化によるフォノンバンドの出現が確認できます。
・有機分子の構造評価
可視光による励起では蛍光により、測定が困難であったテトラセン単結晶の分子内振動領域のラマン散乱スペクトルを示します。この領域に観測されるテトラセン分子の骨格振動やCH変角振動に関係したバンドから、分子構造や結晶内における分子の存在状態に関する情報が得られます。
⇒
[メニューへ戻る]
[HOMEへ戻る]
[前のページに戻る]