Subject   : オージェ電子分光分析法(AES)

カテゴリー  : 産業・技術 


 オージェ電子分光分析法(Auger Electron Spectroscopy)
 AES(Auger Electron Spectroscopy)は、固体表面に電子線を照射しオージェ遷移により放出される電子エネルギー分布を測定し、試料表面(深さ数nm)の元素の同定、定量を行う方法です。
 励起源としての電子線は微細に絞れるため微小領域の分析に優れており、また、走査させることが可能なため2次元の情報を容易に得ることも出来ます。このような特徴を有する装置はSAM(Scanning Auger Microscopy:走査型オージェ電子分光装置)とも呼ばれます。
一次電子線が試料表面に照射されたとき、入射電子が試料原子の内殻の電子を励起し空孔ができる。 この空孔に外殻の電子が遷移する。このとき両者の軌道電子のエネルギー差に相当するエネルギーが放出される。 このエネルギーによって外殻の他の電子が励起され、電子が原子外に放出される。これがオージェ電子である。  オージェ電子のエネルギーは(a)式のように記述できます。
 Ea = Ek - 2El - φ ・・・・(a)

Ea : オージェ電子の運動エネルギー
Ek, El : 各軌道のエネルギー準位
φ : 仕事関数

 各軌道のエネルギー準位は元素固有の値であるためオージェ電子のエネルギーも元素固有の値となります。従って、試料から放出されるオージェ電子のエネルギー値を測定することにより元素の同定が出来ます。  また、各元素の強度から濃度を評価することも可能です。この際、元素および組成による感度の違いがあるため得られた強度を補正する必要があります。  さらに、オージェ電子は、(a)式で示したように原子のエネルギー準位を反映しているので、化学状態によりエネルギー準位が変化すればオージェ電子のエネルギー値やピーク形状も変化します。従って、オージェピークの変化から元素の化学状態を知ることができる場合もあります。

● 定性、定量分析
試料表面における目的の箇所のオージェスペクトル(ワイド、ナロー)を測定し、得られたピークのエネルギー値から元素の種類、その強度から濃度を知ることができます。また、いくつかの元素(Si、Al等)については、ピークのエネルギー値、形状から化学状態を評価することも可能です。

● 面分析
電子線を目的の領域で走査させオージェ信号強度を測定することによって注目元素の二次元分布が得られます。得られた分布はオージェ像などと呼ばれ、写真やモニター上で視覚的に評価されます。
例えば、シリコンはメタリックな状態と酸化状態でピークのエネルギー値、形状が大きく変化しているため、メタリックのピークに注目することでメタリックな状態のシリコンの二次元分布(オージェ像)が分かります。

● 線分析
目的の横(または縦)方向のオージェ信号強度を測定することによって注目元素の一次元分布が得られます。

● 深さ方向分析
オージェ分析とスパッタエッチングを併用することにより、注目元素の深さ方向の情報(膜厚、分布、組成、界面での拡散、不純物の有無等)が得られます。

◆ 一般的な特徴
○長所
固体表面(数nm)に存在する元素の種類、濃度についての情報が得られる。
微小領域(サブミクロン)の測定ができる。
注目元素の深さ方向分布、線分布、面分布が容易に得られる。
Si、Al等いくつかの元素の化学状態についての情報が得られる。
▼短所
H、Heの分析ができない。
%オーダー未満の微量成分の測定が困難である。
電子線損傷がある材料、絶縁物の測定に技術を要する。
 ⇒ 電子をプローブとする分析技術

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