Subject : グリースの増ちょう剤
カテゴリー : 産業・技術
グリースの増ちょう剤
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グリースは増ちょう剤、基油、添加剤からなっています。増ちょう剤は基油(潤滑油)を半固体状にする物質であり、微細な粒子として基油の中に分散し、耐熱性、耐水性、機械的安定性など重要なグリース性能を決定づけます。増ちょう剤の種類として、石けん系、ウレア系、有機系、無機系があります。
- ● 石けん系の増ちょう剤
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石けん系の増ちょう剤として、動植物油脂の主成分である高級脂肪酸のカルシウム、ナトリウム、あるいはリチウム塩などがあります。カルシウム石けん(牛脂系)は構造安定剤として若干の水を含んでいるため、高温では水が分離し構造破壊が起きます。したがって、耐熱性に劣ります。ひまし油系脂肪酸を用いたカルシウム石けんは構造安定剤として水分を含まないため、約100℃まで実用されています。ナトリウム石けんは水に溶けるため、耐水性がなく、リチウムグリースへほとんど置き換えられています。リチウム石けんは耐熱性、耐水性、機械的安定性など最も欠点が少なく、現在主流の増ちょう剤で、リチウム石けんを増ちょう剤とするグリースは、全グリース生産量の50〜60%を占めています。
- ● 複合石けん系の増ちょう剤
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複合石けん系の増ちょう剤は、石けん系の耐熱性を向上させたもので、高級脂肪酸と他の有機酸を組み合わせて複合石けん(コンプレックス)としています。カルシウムコンプレックスは、高級脂肪酸と低級脂肪酸の組み合わせにより、耐熱性が向上していますが、経時硬化や熱硬化する傾向があります。アルミニウムコンプレックスは高級脂肪酸と芳香族カルボン酸を組み合わせた増ちょう剤で、耐熱性、耐水性に優れ、圧送性が良好です。リチウムコンプレックスは高級脂肪酸と二塩基酸あるいは無機酸などを組み合わせることにより、リチウム石けんより耐熱性を向上させています。北米では高温用グリースとして生産量が増え、生産量の約20%を占めています。
- ● ウレア系増ちょう剤
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ウレア系増ちょう剤は、分子内にウレア結合(−NHCONH−)を有する化合物で、アミンとイソシアネートの反応により得られます。石けん系と異なり、酸化の触媒となる金属を含まないため、高温用グリースとして広く使用されています。日本ではウレア結合を2個有するジウレアグリースが、主に生産されていますが、使用するアミンの違いでグリース性状が異なります。芳香族アミンを用いた芳香族ジウレアは、最も安定で合成油を組み合わせて高温長寿命グリースとして使用されています。脂肪族ジウレアは万能タイプです。日本ではウレア系増ちょう剤を使用したグリースが、グリース生産量の約15%と推定されます。
- ● 有機系増ちょう剤
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石けん系より耐熱性に優れるナトリウムテレフタラメートやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)があります。PTFEは熱、水、剪断に対して最も安定ですが、基油にPFAE(パーフルオロアルキルエーテル)を使用したフッ素グリースは非常に高価です。無機系としては、粘土を処理した有機化ベントナイト、シリカゲルがあります。有機化ベントナイトは滴点のないグリースと呼ばれ、耐熱性に優れており、短期間の高温使用に有効です。
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