Subject   : 発光ダイオード(light emitting diode)

カテゴリー  : 産業・技術 


 発光ダイオード(light emitting diode)
半導体のpn接合に電流を流して光を放出させるようにしたダイオード。英語の頭文字を並べてLEDともよぶ。半導体ダイオードのpn接合に電流を流すと、n形半導体の電子がp形半導体域に、p形半導体の正孔がn形半導体域に拡散する。これらの電子と正孔はそれぞれの領域にある正孔と電子と再結合するが、その際、半導体の禁制帯幅に応じたエネルギーに対応する波長の光を放出する。この現象は注入型エレクトロルミネセンスとよばれるが、1907年にイギリスのラウンドH.J.Roundにより、炭化ケイ素に針を立てて電流を流すと発光する現象として観察された。ついで22年にソ連のローセフO.B.Лосев/O.V.Losevにより再発見され、種々の材料について多くの研究がなされた。今日の形の化合物半導体を用いた発光ダイオードは、アメリカRCA社でのローブナーE.E.Loebnerによる57年からの開発により始められた。化合物半導体を用いると、材料の組み合わせによって発光効率のよいヘテロ(異種金属接合)構造によるpn接合をつくることが容易で、短い任意の光波長の発光に適した禁制帯幅の広い半導体結晶を人工的につくることもできる。

発光ダイオードは通信用に赤外光、表示用に赤、橙(だいだい)、緑、青の各種の可視光のものが開発されている。赤外用には光波長0.88ミクロンのヒ化ガリウム(GaAs)を始め、最大1.8ミクロンをカバーできるGaIn(インジウム)As、GaInAsP(リン)などの混晶があり、このほかSb(アンチモン)との‐族の組み合わせによる化合物半導体によって種々な波長帯のものが開発されている。可視光用では赤色用にGaPに発光効率を増すために発光中心としてZn(亜鉛)‐O(酸素)ペアを加えたもの、橙、黄色用にはGaAsPにN(窒素)を加えたもの、緑色用にはGaP、青色用にはGaNのほか‐族のZnS(硫黄)、ZnSe(セレン)などが用いられている。なお、技術的に開発がきわめて困難とされていた青色発光ダイオードは、1993年世界に先がけ日亜化学工業の中村修二(現カリフォルニア大学教授)が開発に成功、実用化したものである。

さらに、高輝度用としてダブルヘテロ接合のほか超格子構造により、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムリン化ガリウム(InGaP)、インジウムリン化ガリウム・アルミ(InGaAlP)などが青色・緑色、黄色、赤色などの発光用に開発されている。発光ダイオードは、赤、緑、青とも数カンデラと明るく、発光効率は白熱灯の数倍以上で、寿命も長いので、屋外用大画面ディスプレー、信号機、自動車用ランプなどへと用途を広げている。
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