Subject   : 姿勢制御(attitude control)

カテゴリー  : 産業・技術 


 姿勢制御(attitude control)
 人工衛星に搭載されている姿勢センサや観測機器、あるいはアンテナの方向、太陽電池アレイの太陽方向への指向を精度よく実施するために姿勢制御が必要である。衛星は軌道上に残存する大気によるドラッグ、重力傾斜トルク、地磁気と衛星の磁気モーメントの相互作用で発生する磁気トルク、太陽輻射圧等の力を受けて姿勢を変えるからである。

 衛星の姿勢は地球センサ、太陽センサ、スタートラッカ、ジャイロで検出する。姿勢制御方式には重力傾斜安定法、スピン安定法、三軸姿勢安定法等がある。 重力傾斜安定法は地球の引力が距離の二乗に反比例して変化することを利用して衛星の姿勢を安定化するもので、細長い形状をした衛星の長手方向が地球を指向する。スピン安定法は衛星全体を回転することによって、空間に対し一定の姿勢を安定に保つコマの原理を応用したものである。三軸姿勢安定法は上記太陽センサ、地球センサ等を用いて各軸の誤差を検出し、これを小型のスラスタやモーメンタムホイールを用いて補償することにより一定の姿勢を保持するものである。

 どの方式を用いるかはペイロードの指向方向、姿勢精度要求を勘案して決定する。因みに重力傾斜安定法では精度は5度程度、スピン安定法では1度、三軸姿勢安定法では0.001度が可能である。ただし、重力傾斜安定法、スピン安定法が共に受動式で低コスト、長寿命の特徴があるのに対し、三軸姿勢安定法は高精度ではあるが、高価で重く、かつ必要電力量が大きく高信頼性を確保するには冗長系を構成する等の配慮が必要である。

 地球観測衛星の場合は、ペイロードである観測機器を地球指向面であるヨー軸に集める必要があったり、機器を動かす為に大電力が必要で大きな太陽電池パドルを搭載するケースが多く三軸姿勢安定法が用いられることが多い。高度hの三軸姿勢安定衛星でピッチ、ヨー、ロール軸の姿勢誤差が画像へ与える影響はズレとして示される。この誤差を除去するための制御法として各軸にとりつけられたスラスターを作動させて誤差を許容値内におさめる方法や、リアクションホイールを用いて誤差に応じてホイールの回転速度を変化する方法がある。スラスターの噴射は補正方向のスラスター噴射とこれに引き続く逆方向のスラスター噴射が組で行われる。スラスターの大きさや噴射時間はこの際の姿勢変動率の画像への影響を考慮して決定しなくてはならない。

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 ⇒ 人工衛星(Artificial Satellite)

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