Subject : IMG(Interferometric Monitor for Greenhouse Gases)
カテゴリー : 産業・技術
IMG(Interferometric Monitor for Greenhouse Gases)
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ADEOSに搭載される温室効果気体観測センサとしてJAROSが開発した装置。マイケルソン干渉分光計を用いて、波数域700-3000cm-1(波長域3.3-14.3μm)の地球赤外放射スペクトルを、 0.1cm-1という高い分光分解能と高い測光精度で、衛星から直下視で測定する。
スペクトル走査に要する時間は10秒間で、この間の衛星の軌道運動によって地表面視野が動かないように、 2軸駆動の平面鏡(IMC鏡)により補償する。 IMC鏡は、放射輝度校正の際には搭載黒体と深宇宙方向に向くようプログラムされている。 IMC鏡はまた、軌道を含む面と直角方向に、直下視方向から-20゜まで振ることができるので、火山噴火や野火などのイベント観測にいち早く対応できる。
赤外光の検出は3つの波長帯に分けて、2ヶのInSb素子と1ヶのHgCdTe(MCT)素子によって測定する。これらは機械式冷凍機により液体窒素温度に冷却される。
3個の検出素子は同一の焦点面に配置されているので、 3つの波長帯では視野が異なる(各素子の視野は0.6゜角で、地表面では8 km平方)。干渉計の走査鏡の移動距離は10cmで、真空潤滑の課題を解決するため磁気浮上を採用し、リニアモータ駆動によっている。光学系のアラインメントはダイナミックに行うので、そのために干渉計光路内にHe-Neレーザ光を挿入し、生じた干渉縞を検出して制御に使う。レーザ光の干渉縞はまたインターフェログラムをサンプルする際の同期信号にも使われる。
IMGが測定したデータには地球大気の気温と微量気体濃度の高度分布に関する情報が含まれているので、地上でデータ処理をして気温や気体濃度を求める。衛星から送られて来るのはインターフェログラムであり、このデータをフーリエ逆変換してスペクトルを求めるが、この際位相補正や絶対校正を施す。ひとつのスペクトルは約2万個のデータ点から成るが、このうち約2千個を用いて逆問題を解くことによって気温と気体濃度の高度分布を求める。また、地面・海面の温度(正しくは放射輝度温度)も求めることができる。
これらのデータ処理演算の際には、IMGの視野内にある雲の情報が必要なので、同じ衛星に搭載されている画像センサーのデータも取り寄せて処理を行う。これらの演算・処理一切はERSDACに設置されたシステムで行われる。
IMGで求める気体濃度としては、水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、一酸化炭素、オゾンがある。また、スペクトル・データは大気放射過程の色々な研究や、雲・エァロゾル粒子の微物理特性を求める研究にも利用され、さらに火山噴火や大規模野火からの二酸化硫黄や炭化水素類の検出もできる可能性がある。
IMGのデータ解析処理アルゴリズムの開発のためのデータセットの取得と、 IMGの飛翔後に行う測定データの検証のために、 (財)電力中央研究所が実施しているプロジェクトにCEIDR(Campaign for Evaluation of IMG Data Retriever)がある。これは、海・陸表面温度、気温高度分布、水蒸気・微量気体分布などを、地上における直接測定、リモートセンシング測定、ラジオゾンデ測定と併せて航空機観測を行ない、 IMGの観測に関連する総合的なデータセットを得ようとする計画である。
この計画の中心となるのがIMGと光学的に同等の性能を持った、航空機搭載用のマイケルソン干渉分光計TIIS(Tropospheric Infrared Interferometric Spectrometer)を用いた航空機観測実験である。
⇒
人工衛星(Artificial Satellite)
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