Subject   : 光ソリトン (optical soliton)

カテゴリー  : 産業・技術 > 光通信


 光ソリトン (optical soliton)
光ファイバ中の群速度分散 (GVD)と自己位相変調効果(SPM)と呼ばれる非線形光学効果とが釣り合うことにより、長距離にわたって波形を変えずに伝搬する光パルスのこと。

一般に長距離を伝搬する孤立波をソリトンという。この用語は、ザブスキー(Zabusky)とクリスカル(Kruskal)氏が1964年に発表した論文で初めて使われた。彼らが一次元格子振動の研究をしているとき、興味深い波の挙動を発見した。ある条件下で孤立した波は粒子のように振る舞い、お互いに衝突を繰り返してもその形を変えないというのである。この孤立波に対して、二人はソリトンと名付けた。 その後、1973年にベル研究所のHasegawaとTappertは、光ファイバの中でもソリトンを作り出せることを提案した。光ファイバの群速度分散と自己位相変調効果とを釣り合わせることにより、光ファイバの中で特殊な光パルスが発生させることができる。これが光ソリトンである。光ソリトンは、光損失が最小となる波長1.5 μm帯において発生させることができる。さらに、狭いパルス幅で長距離伝送でき、伝送後も波形が変わらない。このため、超高速光通信に有効に利用することができる。

光ソリトンを用いた高速・長距離伝送技術を光ソリトン伝送技術といいます。 光ファイバの伝送媒体としての性能を従来の線形の範囲から非線形の範囲まで拡大することにより、超短パルスを波形の歪なしに伝搬できるようにした技術である。超高速光通信システムを実現するための新しい技術として期待されている。

光通信の伝送容量を増大させるために現在研究されている技術は2種類に大別できる。一つは時間領域における超高速強度変調/直接検波(IM/DD)伝送、もう一つは波長領域における波長分割多重(WDM)コヒーレント伝送である。光ソリトン伝送は時間領域での超高速伝送方式に属する。 伝送容量が10Gbps程度以下の場合には、従来のIM/DD技術で1000 km以上の伝送を実現することが可能である。しかし、伝送容量が数十Gbps、伝送距離が1000 km以上になると、ソリトン伝送方式の方がすぐれている。

 ○ 自己位相変調 (self phase modulation )
光ファイバの中で発生する非線形光学現象。光ファイバなどの媒質の屈折率は、その中を伝搬される光パルスの強度に比例してわずかに変化するため、光カー効果により光パルス自身に位相変調が生じる。この現象を自己位相変調という。
自己位相変調は結果として非線形な位相回転という光学的効果を生む。これを自己位相変調効果という。光ソリトンは光ファイバの群速度分散と自己位相変調効果とが釣り合うことにより発生する。したがって、光ソリトン伝送では自己位相変調効果が非常に重要な役割をはたしている。また、自己位相変調効果を利用すれば、光パルスのスイッチングや波形整形、パルス圧縮などを実現することができる。
 ⇒ 光ファイバ (optical fiber)

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