Subject  : 三尖弁閉鎖症(指定難病212)

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 三尖弁閉鎖症(指定難病212)
 正常な心臓では、全身の静脈血は上・下大静脈から右房へ戻り、右室、肺動脈、肺へと流れ、酸素が豊富な血液となって肺静脈から左房へ戻り、左室、大動脈の順に流れていきます。肺で酸素を取り込むため、肺静脈はもっとも多くの酸素を含んでいます。右房と右室の間にある弁を三尖弁と呼びます。 三尖弁閉鎖症は、生まれつき三尖弁が閉鎖している病気です。そのため、右房へ戻ってきた静脈血は右室に流れ込むことができず、すべて心房間の孔(心房中隔欠損または卵円孔)を通って左房へ流れ込み、左房の血液と混合し、僧帽弁を通って左室へ流れ込みます。正常では左房の血液は多くの酸素を含んでいますが、そこへ酸素の少ない静脈血が流れ込むため、酸素の含有量が低下します。この血液が左心室、大動脈を通って体に送られるため、 チアノーゼ が見られることになります。この病気はチアノーゼを主症状とする先天性心臓病のなかで3番目に多い病気です。右室は小さいことがほとんどで、心臓手術を行っても通常の右室として使用することはできません。従って、使用できる心室が左心室のみであり、単心室症と同じように最終的にフォンタン型の手術を目指すことになります。 三尖弁閉鎖症は大きく分けると、肺へ流れる血液量が少なく、チアノーゼ(低酸素血症)が主な症状となるタイプ(肺血流減少型)と、肺へ流れる血液量が多いために肺や心臓に負担がかかり、呼吸器症状、肝臓の腫れ、むくみ、体重増加不良などの心不全が目立つタイプ(肺血流増加型)があり、治療、外科手術の経過も異なりますが、最終的にフォンタン型手術を目指すことは同じです。

 【原因】
 胎児期(胎生30日ころ)に右心房と右心室、左心房と左心室の繋がりができあがっていく過程がうまく行かず、三尖弁口が閉鎖してしまいますが、その原因は不明です。

 【症状】
 三尖弁閉鎖症の型や合併する他の構造異常などによって異なりますが、肺へ流れる血液量が少ない肺血流減少型ではチアノーゼ(低酸素血症)が主な症状となります。出生後、動脈管が自然に閉じはじめると肺血流量はその分減少し、チアノーゼは次第に強くなります。また、右心室から肺動脈への出口(右室流出路と呼ぶ)の 狭窄 が進行して、ファロー四徴症と同様の低酸素発作を生じることがあります。低酸素発作の症状は、チアノーゼの増強、多呼吸、意識障害などです。一方、肺血流増加型ではチアノーゼは目立ちませんが、肺へ流れる血液量が多いために肺や心臓が負担を受け、呼吸障害、肝臓の腫大、浮腫、体重増加不良などの うっ血 性心不全の症状が目立ちます。

 【治療法】
 チアノーゼが進行するときは肺へ流れる血液量の不足が主な原因であるため、酸素を吸入しても良くなりません。プロスタグランジンという薬を持続静注して動脈管を閉じないようにして、肺へ流れる血液量を確保する治療を行います。動脈管は大動脈と肺動脈を橋渡ししている血管で、出生後に自然に閉鎖する性質があります。これを開存させることによって肺血流を維持することができるのです。その後、2〜4週間のうちに動脈管を開存させておく代わりに シャント手術 を行います。 逆に肺血流が多すぎて心不全症状があるときは、肺動脈絞扼術(肺動脈の回りにテープをかけて絞り込む手術)を行って、肺へ流れる血液量を減らします。また、心房間の交通が不十分で、静脈がうっ血するときは、バルーンカテーテルを使って卵円孔を大きくする カテーテル治療 (心房中隔裂開術:BASと呼ぶ)が必要となることもあります。

<出典:難病情報センター>
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