Subject  : 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(指定難病213)

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 心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(指定難病213)
 整列する過程で異常が生じるなどの心ループ形成過程の異常や、左右軸の異常(内臓錯位)、一側心室の発育障害により発症すると考えられている。左心低形成症候群では、遺伝子レベルでの左心室の発育障害とともに、卵円孔の早期閉鎖や僧帽弁の閉鎖もしくは重度狭窄による流入血流の低下が、大動脈弁および大動脈弓の発育を障害する可能性が考えられている。三尖弁閉鎖では、房室管の右方移動の障害による右側房室弁の閉鎖や、遺伝子レベルでの右心室の発育障害などが考えられている。心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症でも同様に、肺動脈弁交連部の形成障害により右心室への流入血が減少し、右室低形成になる可能性が考えられている。いずれの疾患も原因となる遺伝子異常を含めて、発生異常の詳細は明らかではない。

 【原因】
 原因の詳細は不明である。ファロー四徴症及び心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、二次心臓領域の心筋細胞と、頚部神経堤から遊走する心臓神経堤細胞(間葉系細胞)の相互作用が障害を受けて発症すると考えられている。22q11.2欠失症候群では、二次心臓領域細胞の増殖と動員に重要なTBX1遺伝子の欠失が関与し、右室流出路の心臓大血管病変を引き起こすと考えられている。

 【症状】
 単心室循環(Fontan循環)の長期経過、特に成人期において問題となる症状について列挙する。
1)慢性心不全および不整脈に由来する症状
  易疲労、呼吸促迫、食思不振、顔面浮腫、動悸、失神など
2)低酸素血症に由来する症状・合併症
  チアノーゼ、バチ状指、易疲労、多呼吸、過粘稠度症候群、腎機能低下、痛風など
3)静脈シャントによる右-左短絡の合併症
チアノーゼ、脳梗塞、脳膿瘍など
4)術後遠隔期におけるFontan循環破綻に由来する症状(Fontan術後症候群)
慢性心不全に基づく諸症状、難治性不整脈(心房頻拍、心室頻拍)、低酸素血症、肝腫大、肝線維症、肝硬変、耐糖能低下、腎機能障害、高尿酸血症、蛋白漏出性胃腸症、呼吸機能低下、鋳型気管支炎(plastic bronchitis)、肺動静脈瘻、血栓塞栓症、抑鬱状態などをきたす。

 【治療法】
 新生児期から乳児期にかけて、肺動脈閉鎖もしくは狭窄を伴う場合はBTシャント手術、肺動脈狭窄がなく高肺血流の場合は肺動脈絞扼術を行い、適度な肺血流を維持する。適応基準を満たせば、乳児期中期の両方向性Glenn手術を経て、1?2歳にFontan型手術(上下大静脈からの静脈血が心室を介さず肺動脈に直接還流するように血行動態を修正する手術)を実施する。ただ、順調なFontan循環であっても、肺循環心室を持たないことから、心臓のみならず内臓臓器にも負担がかかり、長期的には破綻していくこととなる。心機能や肺血管抵抗値からFontan型手術の適応外となった症例では、ACE阻害薬や利尿薬などの対症療法を行う。 <出典:難病情報センター>
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