Subject  : ファロー四徴症(指定難病215)

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 ファロー四徴症(指定難病215)
 ファロー四徴症類縁疾患とは、心臓流出路の形成異常によりファロー四徴症に類似する血行動態をとる疾患群であり、ファロー四徴症(肺動脈弁欠損を伴うファロー四徴症を含む)、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症が含まれる。 ファロー四徴症は、@肺動脈狭窄、A心室中隔欠損、B大動脈騎乗、C右室肥大を四徴とする疾患である。胎生初期に肺動脈と大動脈をらせん状に2分割する円錐動脈幹中隔が、前方に偏位することで発症する。その結果、肺動脈(前方血管)は狭小化し、大動脈(後方血管)は拡大して心室中隔に騎乗(馬乗り状態)し、前方へ偏位した漏斗部中隔と筋性部心室中隔との間に、空間的なズレによる大きな心室中隔欠損が発生する。その結果、左右心室は等圧になり、右室は肥大する。ファロー四徴症では、漏斗部中隔の前方偏位の程度により、一連のスペクトラムの病態が見られる。通常、右室流出路狭窄により心室中隔欠損孔を介した右-左シャントが生じ、チアノーゼが見られる。最も前方に偏位した場合、肺動脈は起始部で閉鎖し、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖(極型ファロー四徴症)となる。逆に前方偏位が軽度な場合、チアノーゼは見られず、左-右シャントによる心不全症状をきたす(ピンクファロー)。ファロー四徴症の典型例はこれらの中間に位置し、前方偏位の程度により幅広い病態を呈する。ファロー四徴症の15-20%は22q11.2欠失症候群に合併する。

 【原因】
 いずれの疾患も原因の詳細は不明である。ファロー四徴症及び心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、二次心臓領域の心筋細胞と、頚部神経堤から遊走する心臓神経堤細胞(間葉系細胞)の相互作用が障害を受けて発症すると考えられている。22q11.2欠失症候群では、二次心臓領域細胞の増殖と動員に重要なTBX1遺伝子の欠失が関与し、右室流出路の心臓大血管病変を引き起こすと考えられている。

 【症状】
 未修復のファロー四徴症の臨床症状は、漏斗部中隔の前方偏位に伴う右室流出路及び肺動脈狭窄の程度により規定される。狭窄が強く肺血流量が少ないと、チアノーゼ、ばち状指、易疲労、運動能低下などを認める。一方、狭窄の程度が軽い場合、ファロー四徴症でも肺血流量が多くなり、多呼吸、陥没呼吸、易疲労、体重増加不良などの心不全症状を引き起こす(ピンクファロー)。また、乳児期早期には狭窄が軽く左-右シャントであっても成長とともに右室流出路狭窄が進行して右-左シャントになり、チアノーゼや低酸素発作を繰り返すことがある。貧血や脱水はチアノーゼや低酸素発作を助長する。心エコー検査にて心室中隔欠損とともに大動脈が心室中隔に対して騎乗する所見を認め、さらに大動脈後壁と僧帽弁前尖の線維性連続は保たれる。漏斗部、肺動脈弁、肺動脈主幹部の狭窄を認める。基本病態である右室流出路狭窄には種々の程度があり、これにより重症度も異なる。すなわち、狭窄が軽度の場合には心室中隔欠損レベルでの右-左短絡(右室の静脈血が左室の動脈血に混じる状態)は少なくチアノーゼも目立たない。しかし、狭窄が強度だと右左短絡が顕著で肺血流そのものも少ないためにチアノーゼは強くなる。心臓カテーテル・造影所見では、収縮期右室圧は、左室・大動脈圧と等しい。肺動脈圧は正常もしくはやや低圧である。 心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、出生直後よりチアノーゼが見られる。動脈管が閉鎖すると致死的となる。

 【治療法】
 ファロー四徴症では、右室流出路及び肺動脈狭窄の程度が肺血流量を規定し、末梢肺動脈と左心室容積の発達に影響する。したがって、肺動脈狭窄が高度な症例では、適切な時期(新生児期から乳児期前半)にBTシャント手術を行い、肺血流量を増やしてチアノーゼを改善させるとともに、左心室容積を十分に発達させ、1歳前後に行われる心内修復術に備える。鉄剤や輸血による貧血の改善、十分な水分補給による脱水の予防も重要である。
ファロー四徴症も心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症も、末梢肺動脈及び左心室が十分に発達する1歳前後に、心室中隔欠損孔閉鎖及び右室流出路拡大術(もしくはラステリ手術)を行う。多くのMAPCAが発達した心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症では、乳児期中後期にMAPCAを束ねて主肺動脈もしくは人工血管を介して右室流出路に吻合する肺動脈統合術(unifocalization手術)が行われる。約1年後に肺血流分布が改善したら、心室中隔欠損閉鎖術を行う。最重症例ではMAPCA自体も低形成であり、肺動脈統合術の適応がない場合もある。 <出典:難病情報センター>
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