Subject  : 神経線維腫

カテゴリー: 健康・医療情報 > がん


 神経線維腫
神経線維腫症は遺伝性の病気で、皮膚の下や体の他の部分に軟らかい肥厚した神経組織(神経線維腫)が増殖します。 神経線維腫は、末梢神経線維の周囲を覆うシュワン細胞などの末梢神経を支持する細胞の増殖です。皮膚の下に小さなかたまりがあるのが感じられ、普通は思春期を過ぎてから現れます。神経線維腫症には2つのタイプがあり、フォン・レックリングハウゼン病として知られている末梢性の1型と、中枢性の2型です。1型は3000人に約1人、2型は4万人に約1人の割合で発症します。 神経線維腫症の人の約半数が、自分の子供に遺伝させています。片方の親から神経線維腫症の遺伝子を1個受け継ぐだけで発症するため、この病気をもっている両親のどちらかから、それぞれの子供に病気が遺伝する確率は50%になります。神経線維腫症をもつ残り半分の人は、自然に起きた遺伝子の突然変異が原因です。つまり家族の中に神経線維腫症の人がいなくても、発症の危険があることになります。

 【症状】
末梢性神経線維腫症の人の約3分の1はまったく症状に気づかず、日常の診察で皮膚の下にある神経の近くにこぶが見つかって、初めて診断されています。別の3分の1の人は、この病気による美容上の問題のために診察を受けて見つかり、また残り3分の1の人は、脊髄や神経が腫瘍に圧迫されたことによる脱力など、神経学的異常に気づいて受診し、病気が判明しています。
胸、背中、骨盤、ひじ、膝(ひざ)などの皮膚にできる薄茶色のしみ(カフェオレ斑)が特徴的です。この斑点は、生まれたときからすでに存在しているか、あるいは乳児期に現れます。10〜15歳の間に、さまざまな大きさと形をした肌色の増殖物(神経線維腫)が皮膚に現れはじめます。これらの増殖物は10個未満のこともあれば、数千個ものこともあります。一部の人には、皮膚の下の神経線維腫や神経線維腫の下にある骨の過成長によって、体の構造に異常が生じます。たとえば、背骨が異常に曲がる脊柱後側弯症、肋骨の変形、腕や脚の長骨の伸張、眼球の周囲を含む頭蓋骨の骨欠損(これにより眼がふくらむ)などが起こります。
神経線維腫は体のどの神経にも発生しますが、頻度が高いのは脊髄神経根です。この場合、症状はほとんど、あるいはまったく現れません。しかし、腫瘍が脊髄を圧迫しはじめると、圧迫部位に応じて体のさまざまな部分で麻痺や感覚障害が生じ、深刻な事態となります。神経線維腫が末梢神経を圧迫すると、神経が正常に働かなくなり、痛みや脱力が起こります。神経線維腫が頭部の神経を侵した場合は、失明、めまい、難聴、耳鳴り、協調運動障害などが起こります。
神経線維腫症の多くは、進行性です。神経線維腫の数が増えるにしたがって、現れる神経障害の症状も増えます。
中枢性神経線維腫症の場合は、体の両側の聴神経に腫瘍(聴神経腫)が発生します。この腫瘍ができると、20歳ほどの若さでも難聴になったり、めまいが起こることがあります。この病気の患者はまた神経膠腫や髄膜腫も併発することがあり(脳内や脳の近くに由来する腫瘍を参照)、若いのに白内障が現れたりします。この病気は遺伝性のため、家族に同じ病気の人がいることがあります。

 【治療法】
神経線維腫症の進行を止めたり、治す治療法は見つかっていません。個々の神経線維腫は、手術で切除したり、放射線療法で小さくすることはできます。神経の近くで増殖しているときは、しばしばその神経も切除が必要になります。
神経線維腫症は遺伝性のため、この病気の人が子供をもつことを希望する場合は、遺伝カウンセリングを受けるとよいでしょう。神経線維腫症の子供が1人いて、両親はこの病気ではない場合には、もう1人の子供が神経線維腫症になるリスクは非常にわずかです。
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