Subject : 血栓性微小血管症(TMA)
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血栓性微小血管症(TMA)
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血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy : TMA)は、血小板減少と溶血性貧血に、腎障害や脳神経障害などの臓器障害を合併する疾患群です。TMAは全身の微小血管に血小板を中心とした血栓が形成されることで発症します。TMAに含まれる代表的な疾患として、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura : TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome : HUS)が有名です。TTPは古典的5徴候(血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経症状)、HUSはGasserの3徴候(血小板減少、溶血性貧血、急性腎不全)で知られていますが、これらの疾患概念が大きく変化しています。TTPと非典型[atypical (a)]HUSは、国の医療費助成の対象となる指定難病に含まれるようになりました。
細血管障害性溶血性貧血、血小板減少、細血管内の微小血栓による臓器機能障害の3徴候からなる病理学的診断名および疾患群の総称。
- 【病態、病因】
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代表的な疾患は、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura; TTP、Upshaw-Schulman症候群;先天性TTP、後天性血栓性血小板減少性紫斑病;後天性TTP)、溶血性尿毒症症候群(hemolyitic uremic syndrome; HUS) である。TTPはフォン・ヴィレブランド因子(VWF)切断酵素(ADAMTS13)の遺伝子異常、切断酵素に対する活性中和抗体などで酵素活性の著減(≦10%)を原因とし、血小板結合活性の高い超高分子量VWF多重体の分解不全により、全身の微小血管内で血小板主体の血栓が形成されて発症する。典型(志賀毒素)HUSは病原性大腸菌が産生する志賀毒素による内皮細胞障害(タンパク合成阻害)で、毒素のGb3受容体が腎臓の糸球体内皮細胞に高発現しているため腎障害主体になると考えられている。非典型HUS (aHUS)を「補体調節因子異常に伴うTMA」とするものと「TMAの中でTTPと典型(志賀毒素)HUSを除いた全て」とする立場がある。前者では補体第二経路やその調節因子の遺伝子異常や自己抗体による補体の過剰活性化と内皮傷害が微小血管障害を引き起こすと考えられているが、腎障害主体の理由は明確ではない。後者の中には、先天性または後天性の補体制御異常に加えて、薬剤(抗癌剤、免疫抑制剤など)、先天性コバラミン(ビタミンB12)代謝異常、先天性凝固線溶系関連因子異常、妊娠(HELLP症候群など)、膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症など)、骨髄・臓器移植などに関連したものなどが含まれ、様々な病因による微小血管の内皮細胞障害によりTMAを発症すると考えられている。
- 【TMAの病理】
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TTPとHUSでは血栓の分布や質に違いがあり、病理学的にも区別しうると報告されている。なおHUSでは病因にかかわらず、基本的な病理変化は同様であるとされている。TTPの血栓は血小板に富み、全身とくに脳、心臓、腎臓の細動脈や毛細血管に分布する。HUSでは腎臓に限局し小動脈、細動脈、毛細血管に血栓を認める。微小血栓に加えて糸球体病変、皮質壊死、尿細管病変を様々な程度に合併する。血栓の質は明確ではないが血小板とフィブリンからなると考えられている。微小血管血栓症として類似する播種性血管内凝固症候群(DIC)は種々の疾患を基礎に引き起こされる全身性の消費性凝固異常であり、全身、特に肺や腎臓の毛細血管にフィブリン主体の微小血栓が形成される。
<出典:日本血栓止血学会>
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