Subject   : 磁性体

カテゴリー  : 学びの館 > 物理・材料 


 磁性体
一般に物質は磁束を印加されると自ら磁気分極する。この現象を磁化と呼ぶ。磁化は鉄などでは顕著だが、およそ全ての物質はわずかながらも磁化し得る。(水さえも)。特に同じ磁束の強度でも強く磁化される物質を磁性体と呼ぶ。  では、物質はなぜ磁化するのか?物質の中にはもともと磁気双極子モーメントを持っているものがある。例えば電子はもともとスピン量子数を持っている。このスピン量子数は、実際に電子が回転していることを意味しているのではなく、波動関数の空間対称性を意味しているが、実際的な測定では磁気双極子モーメントとして検出される。つまり、電子はその本質として磁気双極子モーメントを持っている。一般にスピン量子数が(奇数/2)の粒子はフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれ、それが電荷を持てば磁気双極子モーメントも持つことになる。電子の他にも陽子や原子核の一部は電荷を持ち、かつ奇数のスピンを持つので、弱いながら磁気モーメントを持つ。さらに、電子は原子核の回りを回転運動(正しくはこれも波動関数の軌道角運動量を意味)しているので、それに伴う磁気モーメントが存在する。

● 常磁性
物質に磁場を加えると磁場の方向に磁化され、磁場を取り去ると磁化が消える現象。個々の原子、分子は磁気モーメントを持っているが、磁気モーメント間の相互作用が弱く、熱運動のためバラバラな向きでモーメントが存在するため通常は磁化が現れない。しかし外部から磁場を加えると磁気モーメントの向きがそろって磁化が現れる。

● 反磁性
物質に磁場を加えると磁場と反対の方向に磁化され、磁場を取り去ると磁化が消える現象。 (負の磁化率)

物質の原子、分子にもともと磁気モーメントがない場合、外部から磁場を加えると原子核の回りの電子による電流が誘導され、それに伴う磁化が発生する。この磁化はレンツの法則により加えられた磁場を打ち消す方向に発生する。電子による電流は他の粒子との相互作用がないため散逸が起きず、超伝導と同様に加えられた磁場がなくなるまで流れ続ける。

● 強磁性
物質に磁場を加えると磁場の方向に磁化され、磁場を取り去っても磁化が消えない現象。

強磁性体は原子の持つ磁気モーメントの原因となるスピンが正交換相互作用を持つため、スピンの方向がそろい、もともと磁化を持っている。原子のスピンのそろった領域は磁区と呼ばれる。通常はいろいろな方向の磁区が組み合わさって物質を構成しているため、巨視的には磁化が見えないことが多い(鉄の塊など)。しかし、いったん磁場を近づけると磁区のスピンの向きがそろい、全体として磁化が発生する。(このとき、磁区の壁が移動する形で磁化の向きがそろう)。この磁化のそろいは磁場を取り去っても元に戻らないため、磁気の履歴(ヒステリシス)現象が起きる。


 ⇒ 誘電体、圧電体、焦電体
 ⇒ 磁石

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