Subject   : 栄養素の消化と吸収

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 栄養素の消化と吸収
三大栄養素の消化と吸収は以下のようになる。

■ タンパク質の消化・吸収
タンパク質は,種々の消化酵素によって,最終的に20種のアミノ酸にまで分解される。アミノ酸は 小腸上皮細胞から吸収され,門脈を通って肝臓に運ばれる。

タンパク質は、胃の中で、HCl, ペプシンによりポリペプチドに分解される。 ポリペプチドは、胃小腸管腔で、トリプシン,キモトリプ シン,CPaseにより管腔内消化され、 オリゴペプチドや アミノ酸に分解される。さらに、小腸粘膜上皮で、 ジペプチダーゼ,トリペプチダーゼ,アミノペプチダーゼ などの働きにより、 細胞内消化/膜消化され、アミノ酸になる。 ・胃の消化酵素ペプシンは,前駆体ペプシノーゲンとして分泌され,胃の中で活性化される。 ・膵液で分泌されるトリプシノーゲンは,十二指腸に存在するエンテロキナーゼで活性化され,ト リプシンになる。キモトリプシノーゲンはトリプシンやキモトリプシンによって活性化されてキモ トリプシンになる。

■ 糖質の消化・吸収
炭水化物(デンプン)は一部,唾液α-アミラーゼで二糖類(マルトース)になるが,大部分は膵 α-アミラーゼ(アミロプシン)で分解される。すべての二糖類は,小腸粘膜上皮細胞の酵素(マ ルターゼ,ラクターゼ,スクラーゼ)で単糖にまで分解される。 単糖は小腸粘膜上皮細胞から吸収され,門脈を通って肝臓に運ばれる。

■ 脂肪の消化と吸収
脂質は水に溶けないため胆汁酸塩の助けを借りて乳化(ミセルを形成)され,リパ−ゼの作用を受 けやすくなっている。分解で生じた疎水性分子(長鎖の脂肪酸)は,胆汁酸塩とミセルを形成して 小腸上皮細胞で吸収される。ここで,脂肪酸は再びトリグリセリドに再合成され,これにコレステ ロールや少量のリン脂質とタンパク質が加わり,カイロミクロン (リポタンパク質の1つ)になる。 カイロミクロンはリンパ管から左鎖骨下静脈に入り,肝臓,筋肉や脂肪組織に運ばれる。  短鎖や中鎖の脂肪酸は直接,門脈を通って肝臓へ運ばれる(胆汁酸は要らない)。

ミセル形成の働きを終えた胆汁酸塩は回腸から吸収され,門脈を通って肝臓へもどり,再利用され る(胆汁酸の腸肝循環という)。
 栄養素の細胞膜透過
■ 拡散輸送:エネルギーの要らない栄養素の吸収
脂質など、物質が細胞内外の濃度差等により勾配に従って拡散,浸透すること。濃度勾配が高いほど吸収が 促進されエネルギーは必要としない。

■ 能動輸送:エネルギーを必要とする栄養素の吸収(糖質とアミノ酸)
物質を細胞内外の濃度勾配に逆らって輸送。勾配に逆らって輸送するためのエネルギーが必要。 ・アミノ酸によってはナトリウムイオンとの共輸送で細胞内に取り込まれる。 ・小腸上皮の微絨毛近くの細胞膜には,糖を輸送する担体(キャリアー)たんぱく質が存在。 グルコースを輸送する担体はsodium-dependent glucose transporter (SGLT)と呼ばれ,ナトリウムイオ ンと共に細胞内にグルコースを取り込む(共輸送)。 ガラクトースもこの担体によって輸送される。 フルクトースはナトリウムイオンを必要としない担体によって輸送される。 細胞内に取り込まれたナトリウムイオンはナトリウムポンプ(Na+-K+-ATPase)によって細胞外へく み出される。

 ⇒ 小腸と腸液

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