Subject : β-酸化系の酵素活性
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
β-酸化系の酵素活性
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β-酸化系(の酵素活性)は、筋肉では、運動などに適応して、合成されます。普段、余り運動をしていない人は、β-酸化活性(脂肪酸をβ-酸化で分解する能力)が、非常に弱いと言われます。β-酸化活性は、高脂肪食(長鎖脂肪酸)や特殊な脂質化合物(の摂取)によって、増強されます。従って、β-酸化活性は、運動などの訓練で、増強するには、血中の遊離脂肪酸濃度が高くなる空腹時(低血糖時)に行うのが良いと言われます。ダイエットなど、体脂肪を減少させるのが目的なら、運動は、空腹時(低血糖時)に行う方が、β-酸化活性を増強する効果が高まります(ダイエットの為には、空腹時に運動した方が、脂肪燃焼効果が高まります。なお、普段、余り運動をしていない人は、
ミトコンドリアの呼吸鎖(電子伝達系と酸化的リン酸化)の活性(酸化活性)も弱いですが、ミトコンドリアの呼吸鎖の活性(効率)は、訓練(持久運動など)によって、適応的に増強されます。
β-酸化系の酵素活性は、内臓では、肝臓で最も多いと言われます(糖新生、ケトン体の産生等が行われます)。
β-酸化系の酵素活性は、肝臓に次いで、心臓(心筋)、腎臓など、ATP消費が大きい臓器で、多いとされます。なお、β-酸化系の酵素活性は、加齢と共に、減少します。
脳のミトコンドリアには、β-酸化系(の酵素)が存在しないので、脳は、グルコースやケトン体をエネルギー源にします。
通常の筋肉(骨格筋)は、β-酸化系(の酵素活性)が強くなく、β-酸化系が最も強いのは、肝細胞と言われます。
肝細胞は、絶食時(血糖低下時)に、血中に増加した遊離脂肪酸(脂肪組織のトリグリセリドがHSLにより分解され生成される)を取り込み、ミトコンドリア内でβ-酸化します。
肝細胞が遊離脂肪酸をβ-酸化しますと、ミトコンドリア内にNADH2+やFADH2が増加し、呼吸鎖(電子伝達系)の燃焼容量が満杯になり、TCA回路は、作動しなくなります。遊離脂肪酸のβ-酸化により、アセチル-CoAが増加しますと、ケトン体が生成されますが、ケトン体のアセト酢酸は、NADH2+により還元され、β-ヒドロキシ酪酸となって、放出されます。また、遊離脂肪酸のβ-酸化により、ミトコンドリア内に増加したNADH2+は、ミトコンドリア外にリンゴ酸として還元当量が輸送され、糖新生が、行われます。
このように、肝臓では、遊離脂肪酸のβ-酸化に伴い、糖新生、ケトン体の産生が増加しますが、TCA回路は作動しません(TCA回路の代謝によっては、NADH2+は、電子伝達系に供給されません)。
β-酸化(脂肪酸分解)では、酸素は必要でありませんが、β-酸化により生成されたNADH2+やFADH2、それに、アセチル-CoAが、呼吸鎖で代謝される(脂肪燃焼)際には、酸素が必要です。
- ■ グルコース(ブドウ糖)の補給
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脂肪酸がβ-酸化され、生成されるアセチル-CoAは、オキサロ酢酸と結合しないと、TCA回路で代謝されないので、NADH2+も生成されず、呼吸鎖でATPが生成されません。脂肪酸が分解(β-酸化)され、燃焼(代謝)されるには、オキサロ酢酸を供給するに足るグルコース(ブドウ糖)の補給が、必要とされています。
オキサロ酢酸は、ミトコンドリア内外を、移動出来ません。しかし、リンゴ酸は、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、ミトコンドリア内外を、移動出来ます。
リンゴ酸は、ミトコンドリア内で、オキサロ酢酸に変換され、TCA回路の回転を高め、脂肪酸のβ-酸化で生成されるアセチル-CoAを、迅速に処理し、脂肪の代謝を促進し、TCA回路でのNADH2+生成を高め、呼吸鎖でのATP生成を高めると、考えられます。
⇒
β酸化(ベータ酸化)
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