Subject   : テルペン (terpene)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 テルペン (terpene)
テルペン (terpene) はイソプレンを構成単位とする炭化水素で、植物や昆虫、菌類などによって作り出される生体物質である。

「テルペン」の語源はテレピン油であるが、実際はテレピン油に限らず多くの植物の精油の主成分である。それらは形式上2つ以上のイソプレン単位 (C5) から構成されており、イソプレン単位の数に応じて、それぞれモノテルペン (C10)、セスキテルペン (C15)、ジテルペン (C20)、セスタテルペン (C25)、トリテルペン (C30)、テトラテルペン (C40) と呼ばれる。
分類によってはテルペン類のうち、カルボニル基やヒドロキシ基などの官能基を持つ誘導体はテルペノイド (terpenoid) と呼ばれる。それらの総称としてイソプレノイド (isoprenoid) という呼称も使われる。テルペノイドは生体内でメバロン酸から生合成される。
モノテルペンはバラや柑橘類のような芳香を持ち、香水などにも多用される。例えばリモネンはレモンなど柑橘類に含まれる香気成分であり、溶剤や接着剤原料などとしても利用される。メントールは爽やかな芳香を持ち、菓子や医薬品に清涼剤として用いられている。
香り以外にもテルペノイド誘導体には生体において重要な役割を果たしているものが多い。すなわち、モノテルペン類より大きなテルペノイドは生理活性を示すものが多い。スクアレンやコレステロールはイソプレノイドより生合成される。また、植物色素として知られるカロテノイドもテルペノイドである。同様にビタミンA、D、E、K、コエンザイムQあるいはクロロフィル、ヘム、胆汁酸もテルペノイドに由来する。
またテルペノイド由来の天然物にも重要なものが多い。イソプレンが多数連なって重合すれば、天然ゴム(イソプレンゴム)が得られる。セスキテルペノイドのアブシジン酸は植物ホルモンとして作用し、ジテルペノイドであるパクリタキセルは抗がん剤として使われる。

■ 非環式テルペン
コリアンダーの種子にはリナロールが含まれる代表的なモノテルペンはミルセン、オシメン、コスメンである。ミルセンは月桂樹、オシメンはラベンダーの精油に含まれる。
リナロールはバラ、ラベンダーに含有される。コリアンダーの葉やパルマローザ油はゲラニオールとネロールを含む。シトロネロールはシトロネラ油から、ミルセノールはタイム油から得られる。ラベンダー油にはラバンジュロールもみられる。イプスジエノールはランの花の香り成分である。これらはモノテルペノイドアルコールである。
モノテルペノイドアルデヒドのネラールとゲラニアールはシス-トランス異性体であり、まとめてシトラールと呼ばれる。香料の原料として利用され、例えばアセトンと縮合させたのち環化させるとイオノンの2種の異性体が得られる。これはスミレのような香りをもつ。イオノンはカロテンやレチノール(ビタミンA)の原料でもある。シトロネラールは防虫剤として使われる。
フラノイドモノテルペンとしてペリレンやローズフランが知られる。ローズフランはバラ油の香気成分で、ペリレンは精油中に含まれる防御フェロモンである。
カルボン酸としてはゲラニル酸が知られる。

 ⇒ 消化管ホルモン

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