Subject   : ヘモグロビン(hemoglobin)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 ヘモグロビン(hemoglobin)
ヘモグロビンとは、ヒトを含む全ての脊椎動物や一部のその他の動物の血液中に存在する赤血球の中にある蛋白質である。酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。 鉄イオンがあるため、赤色を帯びている。

ルミノールは、3-ニトロフタル酸より合成される。

成人のヘモグロビンはα鎖とβ鎖の2種類のポリペプチド鎖が各々2本ずつ存在し、合計4つのサブユニットより構成される四量体である。各サブユニットはグロビンと呼ばれるポリペプチド部分と1つのヘム部分が結合したもので、分子量は1個あたり約16,000である。ヘモグロビン分子全体の分子量は約64,000であり、ヘムを4つ含む。ヘムは価数が2価の鉄原子を中央に配位したポルフィリン誘導体である。ここで酸素と結合し、血液中を通って各組織へ運搬する。

xyとdeoxy酸素と結合したヘモグロビンはオキシヘモグロビン(oxyhemoglobin)、酸素と結合していないヘモグロビンはデオキシヘモグロビン(deoxyhemoglobin)と呼ばれる。 オキシヘモグロビンは鮮赤色で動脈血の色、デオキシヘモグロビンは暗赤色で静脈血の色である。デオキシヘモグロビンの鉄原子はポルフィリンの窒素原子とヒスチジン残基のイミダゾール環の窒素原子と配位した四面体型であり、オキシヘモグロビンはイミダゾール環の反対側に酸素分子が結合して八面体型となっている。なお、ヘム部分に酸素が結合しても鉄は2価のままであり、酸化されない。 また、鉄原子の価数が3価であるヘモグロビンには酸素結合能がなくメトヘモグロビン(methemoglobin;MetHb)と呼ばれる。
胎児のヘモグロビンは2本のα鎖と2本のγ鎖によって作られたHbFが殆どであるが、生後は次第に2本のα鎖と2本のβ鎖で作られたHbAに置き換わっていく。

血中酸素分圧の高いところ(肺)で酸素と結合し、低いところ(組織)で酸素を放出する。1つのヘムに酸素が結合するとタンパク質の立体構造が変化し、他のヘムにも酸素が結合しやすくなる。このことをヘム間相互作用といい、酸素の運搬効率を高めている。
また、pHが低く二酸化炭素が多い環境下では、ヘム蛋白のN末端にあるバリン基に水素イオンまたは二酸化炭素が結合してヘム間相互作用を阻害する結果、酸素との親和性が下がる。さらに、嫌気的解糖(酸素が少ない環境下での、酸素を用いないブドウ糖の分解によるエネルギー産生)の中間代謝産物であるグリセリン2,3-リン酸(2,3-diphosphoglycerate:2,3-DPG)が結合することによっても酸素との親和性が下がる。
ヘム間相互作用と、それに拮抗して働く水素イオン、二酸化炭素、2,3-DPG効果のためにヘモグロビンの酸素解離曲線はシグモイド状になり、酸素の多い肺胞毛細血管では酸素と結合しやすく、酸素が少なく二酸化炭素が多い末梢組織では酸素と解離しやすくなっており、効率よく酸素運搬が行われる。
一酸化炭素やシアン化水素(青酸)は酸素よりもはるかに強い親和性でヘモグロビンと結合するため、酸素運搬を阻害して毒性を発揮する。
同じ呼吸色素であるミオグロビンに比べ酸素を放出しやすいので、筋肉のような酸素を多量に必要とする組織では、酸素の貯蔵庫として働くミオグロビンに酸素が渡される。

 ○ 異常ヘモグロビン
HbS: 鎌状赤血球症の原因となる。 HbH: サラセミアという貧血の原因となる。 HbSはHbAに比べて非常に溶解度が小さく、このため分子が凝集しあって鎌形となっている。鎌状赤血球は遺伝子の異常によって起こっており、β鎖の6位のグルタミン酸がバリンに置き変わっていることが主な原因である。

 ⇒ アミノ酸

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