Subject   : ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)
 1892年にウェルチ(Welch)が分離し、ウェルシュ菌(Clostridium welchii)と名付けた。一般にガス壊疽菌と呼ばれる絶対嫌気性のグラム陽性桿菌である。芽胞を持つので高温や乾燥に抵抗性が強く、酸素のある条件下や、乾燥、高温など増殖に不適当な環境では芽胞をつくる。ウェルシュ菌による病気は、菌の産生する外毒素が原因となり、ガス壊疽と食中毒の原因となる。ウェルシュ菌は、レシチナーゼ、コラゲナーゼ、DNA分解酵素などの外毒素を産生する。これらの毒素の作用により急激で広範な組織破壊が起こり、ガスが産生されて患部が腫れ上がる。一方、本菌によって汚染された食物を摂取すると、腸管内は酸素が無いので増殖し、芽胞を形成する時に腸管毒素(エンテロトキシン)を産生する。

■ ウェルシュ菌毒素 (Clostridium perfringens toxins)
 ガス壊疽(えそ)や食中毒の原因となるウェルシュ菌は耐熱性の芽胞をつくるクロストリジウム属の細菌で、各種の組織障害性あるいは溶血性があるタンパク質性の細菌毒素を菌体外へ産生する。おもな毒素としてα(アルファ)、β(ベータ)、ε(イプシロン)、ι(イオタ)の4種が知られ、産生される毒素によってウェルシュ菌はA、B、C、D、Eの5型に分けられている。そのほかに溶血毒素であるγ(ガンマ)、δ(デルタ)、η(イータ)、θ(シータ)、タンパク質分解酵素であるκ(カッパ)とλ(ラムダ)、ヒアルロン酸に作用する酵素(ヒアルロニダーゼ)であるμ(ミュー)およびDNA分解酵素であるν(ニュー)がある。これらの毒素の中で病原性からみて最も重要な因子はα毒素である。また、A型菌の一部の菌株は食中毒の原因となる腸管毒素を産生する。 ガス壊疽症を示す最も重要な毒素であるα毒素はウェルシュ菌のすべての型が産生するが、A型菌が最も多く産生する。α毒素は酵素作用をもつタンパク質毒素として最初に認められた毒素で、リン脂質を分解する亜鉛を含むホスホリパーゼ Cである。この毒素は細胞膜のリン脂質-タンパク質複合体(リポタンパク質)へ作用して細胞膜を破壊するので、組織の壊死(えし)作用や溶血作用がきわめて強い 。
 ⇒ 食中毒
 ⇒ ガス壊疽(えそ)

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