Subject : 生体防御蛋白(PR蛋白質)
カテゴリー : 学術情報 > 生化学
生体防御蛋白(PR蛋白質)
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植物は各種のストレス要因に抵抗するため、生体防御に関与する一連の蛋白質を誘導したり蓄積したりします。特に植物が病原菌に感染した際に誘導される生体防御蛋白質は、PR蛋白質(Pathogenesisi Related Proteins)と呼ばれています。
このような蛋白質は、多くの植物で共通に誘発され、また、進化の過程で保存されてきた部分構造を持ちます。つまり、植物の生体防御蛋白質は、パンアレルゲンとなり得ます。
天然ゴムの原料となる樹液は、ゴムの木の幹に切り傷を付けることにより採取されます。これはゴムの木にとってストレス以外の何者でもありません。またゴムの木が樹液を多く作り出すように、ある種の植物ホルモンが木に繰り返し注入されています。この物質は、生体防御反応をも誘導します。さらに、ゴムの木の品種改良の過程で、生体防御蛋白を多量に誘導するような性癖が、図らずも選択されてしまったのです。
このような状況から、農園で栽培されているゴムの木から得られた樹液には、生体防御蛋白質が多量に含まれると思われます。そしてそのような蛋白質が最終製品から溶出したとすると、それらは進化の過程で保存されてきた部分構造を持つことから、幅広い交叉反応の原因になると予測されます。
- ■ ラテックス−果物症候群
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ラテックスアレルギーとは、天然ゴム製品が原因となって誘発される即時型アレルギー反応のことです。 症状としては接触局所に誘発される蕁麻疹が一般的ですが、全身性の蕁麻疹やアナフィラキシーショックに発展する場合もあります。
また、天然ゴム製品だけでなく果物や野菜に対しても即時型アレルギー反応を示す症例があり、「ラテックス−果物症候群」と呼ばれています。
一部のラテックスアレルギー患者は、バナナやアボガド、栗、キウイなどの果物を食べたときにも、強い即時型アレルギー反応を示すことがあります。また、口腔咽頭周辺に限られた症状である口腔アレルギー症候群(OAS)があらわれる人もいます。
ラテックスアレルギー患者が幅広い植物に交差耐性を示す理由は、ラテックスアレルゲンと類似した蛋白質が多くの植物に含まれているからです。
血液中には、アレルゲン蛋白に特異的なIgE抗体が存在します。しかし抗体は、抗原全体を認識するのではありません。抗体はエピトープ(抗原決定基)と呼ばれる部分構造を認識します。従って、異なる蛋白が同じエピトープを持っている場合、抗体は各蛋白質を区別することが出来ません。これが交差耐性の原理です。
幅広い交叉反応の原因となるような蛋白質抗原は、パンアレルゲンと呼ばれています。それらの多くは、酵素活性やリガンド結合能を持っています。生命活動の維持に重要な蛋白質の構造、特に機能発現に必要なドメインは、進化の過程で保存されています。また、酵素活性やリガンド結合能に寄与する部分構造は、分子の表面に露出している可能性が高いと思われます。そのような部分構造がIgE抗体に対するエピトープを与えた場合に、幅広い交叉反応が引き起こされると考えられます。
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