Subject   : 光損失 (optical loss )

カテゴリー  : 産業・技術 > 光通信


 光損失 (optical loss )
 光ファイバ中を光信号が伝搬するときに生じる減衰量のこと。

 光ファイバ通信システムにおいて、伝送速度や中継間隔を決定する上で重要な要素が二つある。その一つが光損失、もう一つが伝送帯域である。光損失は、光信号がファイバ内を伝搬するうちにどれだけ減衰するかを示す尺度であり、この値が小さいほど光信号を遠くまで送ることができる。

光信号を減衰させる要因の違いから、光損失は2種類に大別される。一つは光ファイバ固有の損失で、このタイプに含まれるものとしては吸収損失、レイリー散乱損失、および構造の不均一性による散乱損失などがある。もう一つは、光ファイバを通信システムに組み入れる時に付加される損失で、マイクロベンディング・ロス、接続損失、結合損失などがある。

 ○ 吸収損失 (absorption loss )
光ファイバの材料自身がその中を伝搬中の光を吸収し熱に変換してしまうことで生じる損失。光ファイバ固有の光損失の一つである。
光ファイバの原料であるガラス・ファイバは光を吸収する。この吸収による損失は2種類に分けられる。ガラスが本来持っている固有の吸収によるものと、ガラス内に含まれている不純物によるものである。 固有の吸収損失としては紫外吸収損失と赤外吸収損失がある。紫外吸収は波長0.1 μm(ミクロン:1000分の1 mm)近くに損失ピークを持つ。赤外吸収は波長10 μm 近くに損失ピークを持つ。これらのピークの波長以外では急激に損失が減少し、波長1.0 μm から約1.6 μm の間がちょうど損失の谷間となる。 不純物による吸収損失としては、水酸イオン(OH-)による吸収が主で、波長0.94 μm、1.24 μm、1.38 μm 近くで損失がピークとなる。こうした損失の谷間となる0.85 μm 近傍、1.3 μm 近傍および1.55 μm 近傍の波長は、伝送損失が小さいことから光ファイバ通信に利用されている。なお、一般に損失の谷間のことを「光ファイバの窓」と呼んでいる。

 ○ レイリー散乱 (Rayleigh scattering )
光がその波長に比べて十分に小さい粒子にぶつかったとき、いろいろな方向に進んでいく現象のこと。その発生機構を解明した物理学者の名を取り、この現象をレイリー散乱という。
光ファイバはプリフォーム(ファイバ母材という)と呼ばれるガラス棒を2000℃程度の高温に加熱し線引きして作る。高温に加熱したときプリフォームの内部に密度の揺らぎ(屈折率の揺らぎ)が生じる。線引きの際は室内温度まで急激に温度が冷やされるが、密度の揺らぎはそのまま光ファイバの中に残りレイリー散乱を生じさせる。ただし、散乱の大きさは波長の4乗に反比例するため、伝搬する光の波長が長いほど小さくなる。また、散乱の大きさはプリフォームを線引きするときの加熱温度に比例するために、加熱温度が低くてすめば損失も小さくなる。
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