Subject   : MRAM(Magnetoresistive RAM)

カテゴリー  : 半導体 


 MRAM(Magnetoresistive RAM)
 磁気不揮発性メモリ。磁気抵抗効果をもつ GMR(Giant Magnetoresistive:巨大磁気抵抗効果)膜やTMR(Tunneling Magnetoresistive:トンネル型磁気抵抗効果)膜を記憶素子に用いた不揮発性メモリ。 GMR や TMR 膜は,スイッチング磁界によって電気抵抗値が大きく変化する。この現象を利用して,電流の切り替えによって発生する磁界をスイッチするこことで“0”“1”の状態を実現する。

 MRAMでは、メモリーとして機能する素子がMTJ(Magneto Tunnel Junction)素子である。MTJ素子はトンネル磁気抵抗膜TMR(Tunnel Magnetoresistance)を上下から磁性体膜で挟み込んだ構造を採る。

 MRAMはほかの不揮発メモリーと比べて、製品化の時期が早かったが、書き込み技術自体が移行期にある。
 MTJ素子を駆動するには片方の磁性体膜の磁化の方向を常に固定し(固定層)、もう片方(自由層)の磁性体膜の磁化の方向だけを制御する。これは新旧どちらの書き込み方式でも同じだ。従来の磁界書き込み方式では、直交するビット線とワード線の合成磁界によって、磁化の方向を制御する。それに対して新しいスピン注入磁化反転方式では、スピンがそろった電子の電流を流すことで自由層の磁化の向きを反転させる。
 MTJ素子の状態の違いを検出するには、層構造を垂直に突き抜ける方向の抵抗値を測定する。TMRの上下に位置する磁性体膜の磁界の方向が平行な場合は抵抗値が低く(このときの抵抗値をRLとする)、反平行にある場合は抵抗値が高くなるからだ(同RH)。2つの抵抗値の差(RH−RL)をRLで割った値を磁気抵抗比と呼び、この値が大きいほどMTJ素子としての性能が高くなる。現在の磁気抵抗比の最高値は東北大学と日立製作所のグループが2008年に達成した604%である。

MRAM開発の課題は熱安定性と書き込み電流(スイッチング電流)の削減を両立させることだ。電流を削減しなければ微細化には向かないが、単に削減するように構造などを変えると熱安定性が低くなってしまう。
 TMR素子を構成する2つの磁性体膜は平行または反平行のどちらかの状態を取るが、熱エネルギによって、ある確率で別の状態に変化してしまう(熱ゆらぎ)。これはメモリーの内容が例えば0から1に変化してしまうことに相当するため、発生確率を下げなければならない。具体的には2つの状態の間の障壁(記憶保持エネルギ)を高くすればよい。しかしながらMRAMでは書き込み時にも読み出し時にもTMR素子をスイッチング電流が突き抜けるため、障壁が高いとスイッチング電流を大きく取らなければならなくなってしまう。
 この問題に対処するため、2つのアプローチが試みられている。自由層を構成する膜の構造を工夫する手法と、磁化の向きを従来の水平ではなく垂直に取る手法である。
 ⇒ 次世代不揮発メモリー

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