Subject  : ベレムナイト類(Belemnitida、belemnites)

カテゴリー : 地球科学 


 ベレムナイト類(Belemnitida、belemnites)
『軟体動物門頭足綱鞘形亜綱の一目。矢石類とも。

祖先型は石炭紀にはすでに出現していたが、ジュラ〜 白亜紀に栄え、始新世まで存続。外套膜に包まれた殻の先端には方解石でできた長円錐状または指状に伸びた鞘(rostrum、guard)があり、縦断面上で多数の成長線が同心円状に配列する。この部分は化石として多産する。ベレムナイトの語源はギリシア語の「矢尻」に由来するが、鞘の形がそれを連想させたのであろう。保存のよい化石では鞘の内部に円錐状の閉錐(phragmocone)があり、これはアンモナイト類やオウムガイ類の気房と相同である。閉錐は隔壁により多数の室に分かれ、隔壁を貫いて腹側に体管がのびる。閉錐の前方には、へら状の前甲がある。

ベレムナイト類は閉錐内のガスにより浮力を得て遊泳生活を送っていたらしい。軟体部は不明。かつて西ヨーロッパのジュラ系からベレムナイト類として記載された軟体部印象を保存した化石は、今日では別の化石鞘形類(フラグモチュウチス目、コウモリダコ目)に分類されている。現在までに5科約70属が記載され、ヨーロッパの上部中生界の分帯に利用されている。例えば北ヨーロッパの上部白亜系CampanianとMaastrichtianはBelemnellaの種系列により化石帯区分されている。ベレムナイト類は白亜紀前期まではテチス・北極(ボレアル)両区に分布していたが、同紀後期になると北極区のみに生息した。日本では北上地方のジュラ系や下部白亜系宮古層群から産出。米国サウスカロライナ州の上部白亜系Peedee累層産のBelemnitella americanaの鞘化石は、酸素同位体による古水温測定のための標準化石(PDBと呼ぶ)となっている。

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 ⇒ 地質年代表

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