Subject  : うつ病の薬物療法

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 うつ病の薬物療法
うつ病の治療には、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬、精神刺激薬、その他の抗うつ薬など、いくつかのタイプの薬が使用されています。ほとんどの薬は、効果が現れるまで最低数週間は定期的に服用する必要があります。ある人に1種類の抗うつ薬を使用したとき、その薬が効く確率は約65%です。副作用は薬のタイプにより異なります。1つの薬で抑うつを緩和できなかった場合は、数種類の抗うつ薬を併用します。

 ○ 三環系抗うつ薬
三環系抗うつ薬は、以前は治療の中心となっていた薬ですが、現在ではそれほど使用されません。三環系抗うつ薬には鎮静作用や体重増加などの副作用があります。また、心拍数増加や起立性低血圧も生じます。このほか、目のかすみ、口の渇き、錯乱、便秘、尿がスムーズに出てこないといった副作用があります。これらの副作用は抗コリン作用と呼ばれ、高齢者に多くみられます。
アミトリプチリン 、 アモキサピン 、 クロミプラミン 、 デシプラミン 、 ドキセピン 、 イミプラミン 、 マプロチリン 、 ノルトリプチリン 、 プロトリプチリン 、 トリミプラミン
過量摂取時に重大で生命にかかわる毒性あり

 ○ 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
現在最もよく使用されている抗うつ薬です。SSRIは抑うつや気分変調のほか、うつ病によく併発する他の精神障害にも効果があります。吐き気、下痢、ふるえ、体重減少、頭痛といった副作用がありますが、症状は概して軽く、使用を継続しているうちに消失します。三環系抗うつ薬にもSSRIにも副作用はありますが、SSRIの投与には耐えられるという人の方が一般に多いようです。心臓に対する副作用の面でも、SSRIは三環系抗うつ薬より安全です。ただし長期間使用すると、体重増加など別の副作用が生じてくることがあります。SSRIの中には、急に中止すると、めまい、不安、興奮、インフルエンザ様症状といった離脱症候群を引き起こすものがあります。
シタロプラム 、 フルオキセチン 、 フルボキサミン 、 パロキセチン 、 セルトラリン
全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、恐怖性障害、心的外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害、大食症にも有効

 ○ モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬は別のグループの抗うつ薬です。他の抗うつ薬が効かない場合に効果を示すことがありますが、第一選択薬となることはまれです。MAO阻害薬を服用する場合はいくつかの食事制限を守り、特別な注意事項に従わなければなりません。たとえば、生ビール、赤ワイン、シェリー酒、リキュール、熟しすぎた食物、サラミ、熟成チーズ、ソラマメ、酵母エキス(マーマイトなど)、しょう油といった、チラミンを含む飲食物は禁じられます。 ブプロピオン 、 ミルタザピン :口の渇き・体重増加、 ネファゾドン :軽度の鎮静作用とめまい 、 トラゾドン :長時間の鎮静作用、 ベンラファキシン
プソイドエフェドリンを含有する市販のせき止め薬やかぜ薬をMAO阻害薬と併用すると、ズキズキする激しい頭痛とともに、急激な血圧上昇が生じます(高血圧クリーゼ)。MAO阻害薬と併用できない薬にはこのほか、三環系抗うつ薬、SSRI、ブプロピオン、ミルタザピン、ベンラファキシン、ネファドゾン、デキストロメトルファン(せき止め薬)、メペリジン(鎮痛薬)など多数があります。 MAO阻害薬を使用する場合は、クロルプロマジンやニフェジピンなどの拮抗薬を常時携帯するように指導されます。ズキズキする激しい頭痛が起こった場合は、すぐに拮抗薬を服用し、最寄りの救急治療室へ行くべきです。

 ○ 精神刺激薬
精神刺激薬のデキストロアンフェタミンやメチルフェニデートなどは、しばしば抗うつ薬と併用する形で、ときに使用されます。
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