Subject  : 腫瘍随伴症候群

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 腫瘍随伴症候群
腫瘍随伴症候群は、癌がつくり出したホルモンサイトカイン、その他のタンパク質などの物質が、血流に入って体内を循環することで起こります。こうした物質が全身の組織や器官の働きに影響して生じるさまざまな症状が、腫瘍随伴症候群と呼ばれるものです。物質の中には、自己免疫反応を起こして組織や器官を障害するものや、臓器の機能を直接妨げたり、組織を破壊するものもあります。その結果、低血糖や下痢、高血圧などの症状が生じます。

 ○ 多発神経障害(多発ニューロパシー)
多発神経障害(多発ニューロパシー)では、末梢神経の機能不全による脱力、感覚麻痺、反射の低下などが起こります。多発神経障害はときに癌の診断以前に発症し、その中のまれな形として亜急性の感覚神経障害が生じることがあります。この場合は感覚や協調運動の機能が大幅に損なわれますが、脱力はあまりみられません。亜急性の小脳変性は、乳癌や卵巣癌の女性に生じます。この障害は、自己抗体(自己の組織を攻撃する抗体)による小脳の破壊が原因となっている可能性があります。歩行が不安定になる、腕や脚の協調運動ができない、発語障害、めまい、複視があるといった症状は、癌が見つかる前(数週間、数カ月、ときには数年も前)に現れることがあります。亜急性の小脳変性は数週間から数カ月にわたって悪化し、しばしばかなりの機能が損なわれます。

 ○ 眼や筋肉のけいれんと協調運動の失調
神経芽腫の小児にみられます。自分では制御できない眼の動き(眼球クローヌス)や、胴体、腕、脚の筋肉のきわめて速い電撃的な収縮(ミオクローヌス)が生じます。

 ○ 亜急性の運動神経障害
ホジキン病の患者に起こることがあります。脊髄の神経細胞が間接的に影響を受け、多発神経障害と同様のパターンで腕や脚の脱力を生じます。多発筋炎は、筋肉の炎症による筋力低下や痛みとして現れます。多発筋炎に皮膚の炎症を伴うものは、皮膚筋炎と呼ばれます。

 ○ イートン‐ランバート症候群
イートン‐ランバート症候群は、肺癌の患者に起こることがあります。神経によって筋肉を正常に活動させることができず、腕や脚の筋力が低下するのが特徴です。

 ○ 肥大性骨関節症
肥大性骨関節症も、肺癌の患者にみられます。この症候群は手足の指の変形や、X線検査でわかる長骨の端の変化を起こします。

 ○ 肺癌と関連のある腫瘍随伴症候群
小細胞癌は、コルチコトロピンを分泌しクッシング症候群を起こしたり、抗利尿ホルモンを分泌して水分を貯留させて血液中のナトリウム濃度を低下させます(低ナトリウム血症)。ホルモンの産出過剰も、発熱、喘鳴(ぜんめい)、下痢、心臓弁膜症などのカルチノイド症候群を起こします。扁平上皮癌はホルモンに似た物質を分泌し、血液中のカルシウム濃度を非常に高くします(高カルシウム血症候群)。また、カルシウム濃度が高くなる原因として、癌が直接骨を攻撃してカルシウムを血流に放出している場合もあります。血液中のカルシウム濃度が高いと、錯乱や昏睡を起こしたり、ときには死亡することもあります。このほか、男性の乳腺の過剰発育(女性化乳房)、甲状腺ホルモンの過剰(甲状腺機能亢進)、わきの下の黒ずみなどの皮膚の変化があります。
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