Subject   : 脂質の代謝と相互変換

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 脂質の代謝と相互変換
 体内に吸収されたトリグリセリドは、 脂肪酸とグリセロールに分解されます。
 脂肪酸は、ミトコンドリア内で β-酸化によってアセチル-CoAに分解され、 TCA回路で代謝されて、 エネルギー源となります。
 アセチル-CoAがTCA回路で代謝され、NADH2+が生成されるためには、グルコースから作られるオキサロ酢酸(オキザロ酢酸:oxaloacetate)が必要です。
 長鎖脂肪酸は細胞質で活性化されてアシル-CoAになるが、アシル-CoAは ミトコンドリア内膜をを通過できない。そのため、一度、 カルニチンと結合してからミトコンドリアの マトリックス内に取り込まれ、再び脂肪酸アシル-CoAに再生される。 カルニチンやアシル-カルニチンはミトコンドリア内膜を通る事ができる。 ミトコンドリアに取り込まれた脂肪酸アシル-CoA はβ‐酸化の出発原料 になり,アセチル-CoAにまで分解されます。

 偶数個の炭素原子を有する脂肪酸は、β-酸化でアセチル-CoAしか産生出来ず、糖新生には利用されないので、脂肪酸はグルコースには、変換できません。
奇数個の炭素原子を有する脂肪酸からは、β-酸化によってプロピオニル-CoAが作られ、スクシニル-CoA(succinyl-CoA)を経て、オキサロ酢酸に代謝されて、 糖新生が行われます。

 脂肪酸は、グルコースやアミノ酸に変換されないので、過剰に体内に取り込まれても、TCA回路で代謝されないと、トリグリセリドやコレステロールとして体内に蓄積されてしまいます。

 余剰に摂取した糖質(ブドウ糖)や蛋白質(アミノ酸)は、肝臓で、脂肪酸合成により、脂肪酸に変換されます。脂肪酸は、糖質から生成されるグリセロール3-リン酸とエステル結合し、中性脂肪(トリグリセリド)が生成され、VLDLとして、血中に分泌され、脂肪組織に貯蔵されます。
 ブドウ糖50gを過剰に摂取した場合、脂肪14gが生成されます。

グリセロール(グリセリン)は、エタノール(エチルアルコール)や、酢酸同様に、両新媒性の低分子化合物であり、生体膜(細胞膜)を自由に通過出来ます。

■ コレステロール
 人間は、1日約0.3gのコレステロールを食事(食物)から摂取し、1.5〜2gのコレステロールを体内(肝臓など)で合成します。  人間は、1日約0.2〜0.3gのコレステロールを食事(食物)から摂取します。また、1日約2gのコレステロールを胆汁中から腸管内へ排泄しますが、この腸管内に排泄されたコレステロールは、大部分は、再び、腸粘膜から吸収される(腸肝循環)ので、実際には、1日0.4gのコレステロールが、体外に排泄されると言われます。
 生体内のコレステロール合成は、ヒトでは、肝臓が50%、小腸が15%、皮膚が35%を分担しているとされます。コレステロールを多く含む食餌を摂取すると、肝臓で合成される内因性コレステロール量は減少しますが、完全に抑制されることはありません。胆汁酸は、小腸内でのコレステロールの合成を抑制します  コレステロール合成は、摂食時には肝臓と(小)腸で行われ、空腹時には肝臓で行われます。

 ⇒ β酸化(ベータ酸化)

[メニューへ戻る]  [HOMEへ戻る]  [前のページに戻る]