Subject   : 遊離脂肪酸(FFA)

カテゴリー  : 学術情報 > 生化学


 遊離脂肪酸(free fatty acid)
 血漿中では、脂肪酸は、多くは、エステル結合した形、つまり、グリセロールエステル(トリグリセリドやリン脂質)、コレステロールエステルで、リポ蛋白中に存在している(リポ蛋白を構成している)。しかし、エステル結合していない脂肪酸も存在し、遊離脂肪酸と呼ばれている。
 遊離脂肪酸は、脂肪組織で、 トリグリセリドのホルモン感受性リパーゼ(HSL)による分解で生成され、血中を輸送され、筋肉(心臓、骨格筋)のエネルギー源として利用されたり、構築材料として利用される。  遊離脂肪酸は、細胞毒性がある。遊離脂肪酸は、両親媒性の為、大量に存在すると、洗剤作用(界面活性作用)により、細胞膜を溶解させ、細胞を破壊する。必須脂肪酸の多価不飽和脂肪酸は、毒性が非常に高い。  余剰な遊離脂肪酸は、肝臓に取り込まれ、グルコースの代謝で生成されるグリセロール 3-リン酸とエステル結合し、(毒性の低い)トリグリセリドに戻され、リポ蛋白として、脂肪組織に、送り戻される。
 肝臓でのトリグリセリド合成には、特に、食事(食餌)由来の遊離脂肪酸(FFA)が関与するが、脂肪組織由来の遊離脂肪酸(脂肪組織のトリグリセリドがHSLにより分解され生成される遊離脂肪酸)も、肝臓でのトリグリセリド合成、更には、肝臓からのVLDL分泌に影響する。
 血清中では、遊離脂肪酸の70〜87%は、アルブミンに結合している。  血清中(血液中)の遊離脂肪酸の量は、脂肪組織での中性脂肪(トリグリセリド)の分解による遊離脂肪酸の放出と、肝臓での遊離脂肪酸の取り込みによって、調節されている。
 遊離脂肪酸は、血液中のグルコース量(ブドウ糖濃度=血糖値)が不足した状況(飢餓時、絶食時、断食時など)では、グルコースに変わるエネルギー源として、利用される。  遊離脂肪酸は、血液中のグルコース量が不足した状況(飢餓時など)では、骨格筋、心臓、腎臓では、エネルギー源として利用され、また、肝臓では、糖新生のエネルギー源となる(脂肪酸のβ-酸化が行われる)。  正常男性(基礎代謝1,800kcal/日)が、24時間、絶食すると、脂肪組織で、中性脂肪が、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)により、加水分解され、100gの遊離脂肪酸が生成される。その遊離脂肪酸の内、肝臓は、40g(20〜40%)を取り込み、脂肪酸分解(β-酸化)により生成するエネルギー(NADH2+など)を、糖新生に利用する。肝臓は、食事摂取を開始すると、血液中から取り込んだ遊離脂肪酸と、グルコースとから、中性脂肪を再合成し、リポ蛋白(VLDL)として、血中に放出する。 
 遊離脂肪酸の血漿中半減期は、1.7〜3.1分と短く、交替率は、23〜41%/分。
 血中の遊離脂肪酸は、脂肪組織(脂肪細胞内)に存在するホルモン感受性リパーゼ(HSL)により、脂肪細胞内のトリグリセリドが、分解されて生成されたり、あるいは、脂肪組織(脂肪組織に血液を供給する細小動脈や毛細血管の内壁)などの毛細血管壁に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)により、血中のカイロミクロンやVLDL内のトリグリセリドが分解され生成され、血中に増加する。  遊離脂肪酸は、脂肪組織(の脂肪細胞内)に存在する、長鎖脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸など)から構成されている。  遊離脂肪酸は、血中では、アルブミンと結合している。
 遊離脂肪酸(FFA)は、脂肪(エステル化脂肪酸)と区別する為、非エステル化脂肪酸(NEFA)とも呼ばれる。
 ⇒ 脂肪酸

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